Dr.Niwaの推薦を受けて日本向け広告映画のシナリオの翻訳とナレーションを担当することになりました。依頼してきたのは大手の合板(plywood)製造会社でした。工事現場でコンクリートを流し込む時に周りを囲う板に合板(ベニヤ板)が如何に優れているかを解説する20分程度の日本向けのコマーシャル映画です。ギャラは200ドルでしたが当時としては大金です。日本で会社勤めをしている大学同期友人達の半年分の給料に匹敵する額だったのです。しかも私が費やした時間は3日程でした。シナリオが平易な文で日本語に訳し易かったのです。更に宮沢賢治の詩の朗読でマイクに向かっての発声の仕方が分かっていたことも大いに役立ったのでした。
実際の吹き込みは本格的なプロが使うスタジオで行われました。スクリーンに映し出される画面に合わせてナレーションを入れて行きます。これが自分で言うのも変ですが声の乗りも良く画面と最初から最後までぴたりと合って最高の出来となりました。ところがそれから一週間ほどして同じ会社からもう一本やってほしいと言ってきたのです。前回あれだけ上手く行ったのだから今度は経費節約の為スタジオではなくモテルの一室で画面なしでテープレコーダーにナレーションだけを吹き込んでほしいと言うのです。映画の映写時間だけ教えられその時間に合わせてナレーションを録音してくれと言うむちゃくちゃな要求でした。
兎に角ギャラがいいのと相手のしつこさに負けてソニーのテープレコーダーを前にモテルの一室で頑張りましたが全く不満の残る出来でした。ナレーションが画面とずれてしまって合わないのです。その責任は私にあるのではなく経費をつまらないところでケチった会社の担当者にあるのだと自分に言い聞かせましたが日本での反応はどうだったのか考えると暫く落ち着きませんでした。
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