2010年12月9日木曜日

67. 二年目の大きな出来事

私は2年で数学科と物理科の両方の学部を卒業して大学院で理論物理を専攻するつもりでした。ところが数学科は卒業出来たのですが物理科の方は詰まらぬ手違いから学部卒業に必要な単位を一つだけ取り損なってしまったのです。アメリカの友人達はたった一つの学科のために留学を一年延ばさなければならないことを知り「学費が大変だろう」と言って大いに同情してくれました。確かにもったいないとは思いましたが実際は日本語科のTA(ティーチングアシスタント)の職を持っていた上に他のアルバイトもちょくちょくあって滞在が長引けば長引くほど貯金は増えてゆく状態でした。

私はいつも思わぬことに出くわすと「人間万事塞翁が馬」と考えることにしています。もし最初の計画通り2年間で物理科の学部を卒業してどこか他の大学の大学院にでも行ってしまっていたら今の家内と一緒になることが無かったかもしれません。最もそれが良かったかどうかと言う事は別問題でしょうが。 私はとりあえず大学院の数学科に席を置くことにしました。

2年目も終わろうとしていた頃のことです。半年近く文通の途絶えていた日本のガールフレンドから一通の手紙が届きました。「今まで長いことお世話になり有難うございました。今日庭で今迄にいただいた手紙を全部燃やしました。」と言う短い文章が入っていました。
読んだときは一抹の寂しさを感じざるを得ませんでしたが彼女が自分で判断したことなので素直に受け止めることにしました。これから先どれほど海外にとどまるかもしれない人を待つよりもいい人が見つかったら良く考えて自分の人生をえらんでほしいと伝えてあったのです。私もハウスボーイをしていたミセス、プライス家の裏庭で彼女から貰っていた何枚もの手紙を燃やしたのでした。

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