2010年6月23日水曜日

24.ウッディーとMoonshine(密造酒)

下宿同居人大男のウッディーはもてあますエネルギーを時々発散する必要がありました。 発散の仕方は酒、女、そしてスポーツでした。休みの日には必ずと言ってよいほど体育館に行き一人でくたくたになるまでハンドボールのボールを壁にぶつけては拾い又ぶつけては拾いして汗を流して来るのです。 そして女です。 人種差別の激しかった社会であっても白人の女子学生には結構もてたらしいのです。白人女性は黒人男性に意外と興味を持っていて付き合ってくれると聞いていましたが黒人の肉体にあこがれるのか又は差別を受ける黒人に母性愛をくすぐられるのかは定かはではありません。ウッディーの場合は心理学を専攻していたので女性をくどく術に長けていたのかもしれません。

ある時女性をものにする方法を伝授するから着いて来いと言います。ウッディーに着いて行くと黒人が経営する場末の汚らしいドラッグストアに着きました。そこで何やら果実酒のようなものが入っているボトルを一本買ったのです。下宿に持ち帰ると何やらいろいろな得体の知れないものを混ぜてビンを振っています。 暫くすると「出来た」と言いました。Moonshine(密造酒)の完成です。この密造酒を女の子に酔いが回るまで自ら飲んでもらうようにもって行くのがウッディー独特のやり方なのでした。実演して見せるから女性になったつもりで俺と向かい合って椅子に座れと言うのでした。横には作ったばかりの密造酒がグラスに注がれて置かれています。

これから簡単なゲームをやろうと言いました。「僕が手を動かすので良く見ていてそれを同じ順序で真似るゲームだ」と言って「Mr.サイモンが手を叩く・・」とか歌いながら手を叩き、その手を膝に触り、肩に触り、そしてほっぺたに触ったりするのです。その間わずか数秒です。同じ順序で手を動かすのはほんの数個の動作なので簡単に出来そうに思えます。「もし君が僕のやったしぐさを間違えずに真似出来たらこのグラスを僕が飲み干すが、もし間違えたら君が飲むことになる。これがこのゲームのルールだよ。」と言うのです。このゲームはどちらかが酔っ払うまで続きます。初めは易しそうに思えましたがほんの5・6動作でも正確に手の動く順序を覚えていられるものではありません。正確に真似できるのはせいぜい5回に一度ぐらいです。と言うことはウッディーが一杯飲む間にこちらは4杯ほど飲まされることになる訳です。酔いが回れば回るほど記憶が怪しくなるのでますます勝負になりません。酒には弱くない私も間もなく意識が朦朧としてきました。ゲームをして遊ぼうと言って始めるので嫌と言える女性はいないのだそうです。やはり心理学の応用でしょうか? 結局ちょっと声を掛けて知り合った女性が知らぬ間に酔いつぶれウッディーの言うままになってしまうと言います。これは犯罪なのでしょうか? 合意の上と言われればそれまでなのかもしれません。実際にウッディーがガールフレンドをこの方法で酔わせているところを目撃したことはありません。

ある時ウッディーがちょっと頼みたいことがあると言って来ました。「俺と一緒にコンドミニアムで共同生活をしてくれないか」と言うのです。女性をもてなす場所がほしいと言うことでした。ミセス・ジェイコブスンの下宿には女性は連れ込めません。入れてもらえる下宿を見つけるだけでも苦労するウッディーにコンドミニアムなど貸してくれるオーナーなどいません。「君なら日本人だからたいていのところは入れる筈だ。俺が家賃の半分を持つのだからこんないい話はないと思うけどどうだ。」と言います。ちょっとウッディーの手練手管を真近で観察してみたいと言う興味に引かれましたが絶対にそんな話に乗るべきでないと言う友人の強い助言もあってその話は断ることにしました。それから間もなくしてウッディーはミセス・ジェイコブスンの下宿から姿を消したのです。それ以来ウッディーには一度も出会うことはありませんでした。

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