日令丸は横浜から米国西海岸のシアトルに向かうのですが途中カナダのバンクーバーに寄航します。 横浜からバンクーバーまでは8日間の船旅です。長いようでもありますが楽しかったせいか思ったより短く感じられました。 懸念していた船酔いにかからなかったからでしょう。中学の時、伊豆大島に行き帰路大シケで胃が空になるほど吐き続けたことがあります。また、波静かな瀬戸内海の小豆島に向かう船でさえも船酔いに悩まされていました。 バンクーバーまでの航海は比較的穏やかでしたがベッドに横になるとグググと海底に引き込まれてゆくような揺れは毎日ありました。
航海の半ばごろ遭遇した大シケはひどいものでした。 食卓の食器類はボクシングリングのロープの様に食卓の周りに張られていたロープにひっかかり転げまわります。 風呂場に行けば浴槽が遊園地のビックリハウスの床や壁のように大きく傾きお湯はほとんど流れ出ていて風呂の体をなしません。 そんな大しけの中、私はマストの中ごろまで登り持っていった8ミリ映写機で大シケを撮影しました。その時はピッチング(船のたて揺れ)がものすごくジェットコースターに乗ったように急上昇、急降下を繰り返していました。少しは気持ち悪くなるのでしたが吐くところまではいきません。 一方もう一人の船客R嬢は船酔いで完全にグロッキーになり船室に籠ったまま出て来ません。東京の自宅に「太平洋ど真ん中、看護婦酔った俺元気!」という電報を打ったのはその時です。
実に不思議です。あんなに船揺れに弱かったこの私が何故平気だったのか。一つだけ思い当たることがあります。 船でアメリカへ渡らなければならないと決まった時、船酔い対策として自分で考えた方法でした。 後楽園遊園地には大きな円形壁に背をあてて立つと円形壁の回転が始まりそれと同時に床板が下がってゆくのに遠心力のおかげで体は壁に押し当てられたまま宙に浮く装置がありました。 渡航前この遠心力浮遊機に何回も乗って回転に体を慣らしていたのでした。 それが効いたとしか思えませんがとにかくそれ以来私は何度船に乗っても船酔いにかからなくなったのです。
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