リチャードソン邸はブロードムアーゴルフ場の中にありました。このプライベートゴルフ場は歌手のアンディー・ウイリアムズや名喜劇俳優のボッブ・ホープなどもプレーしに来ていた名門コースです。リチャードソン邸の傍にあったスタートホールからはよくヒュルヒュルヒュルと唸りを立てて飛び出す打球が聞こえました。今では私もゴルフをやりますがプロのトーナメントを見に行って唸る打球を耳にすることはあっても仲間の打球が唸りをたてるのは聞いたことがありません。
ブロードムアーには結構上級ゴルファーが来ていたようです。このゴルフ場は木曜日が芝の休養日でクローズとなり従業員はプレーしてよいことになっていました。私も従業員でしたからプレーしてよかったのですが一年近くも勤めていてこの特権を一度も利用しませんでした。「ゴルフなど覚えて日本に帰ったらお金が掛かって大変よ」と言うガールフレンドの言葉を真に受けてゴルフをやらなかったのですが今考えると大変もったいないことをしたと思います。リチャードソン夫人は良く友達を招いてブリッジをしたり、ゴルフをしました。ゴルフをする時はキャディー役を仰せつかります。キャディーと言っても芝の目が読めるわけも無いし、ゴルフのルールも知らなかったので単にリチャードソン夫人とゲストのゴルフバッグを担いでお供するだけでした。今思うとカートがなく二人分を担いで回ったのですから大変な仕事でした。ワンラウンドお供すると6ドル貰えました。
このコースにはほかにも思い出があります。ある日の午後犬のトップスを散歩に連れ出しました。フェアウエーを横断しようとすると真新しいゴルフボールが落ちていました。周りを見回しても誰も見えません。犬の散歩中にはよくロストボールを拾っていましたのでこのボールも拾い上げてポケットに入れました。いつもと違うのはコース脇のブッシュの中ではなくフェアウエーのど真ん中であったことです。その時です。遥か遠くにゴルファーの姿が現れました。しまった、これはプレー中のボールだったのです。しかし完全に私の姿はゴルファーの視野に入っています。ボールを元の位置に戻しに戻ったら訴えられるかもしれません。ハウスボーイを解雇されるかもしれない。そう思うと怖くて戻れません。結局、ボールをポケットに入れたままコースを横断し林に身を隠したのです。豪快なショットを放ったゴルファーはフェアウエーの真ん中にある筈のボールが見つからなくて首をかしげたに違いありません。今でも思い出すたびに悪いことをしたなと思っています。
またある時トップスを連れてゴルフ場のコースを散歩して家に戻ってくるとポケットに入れていたはずの家のキーが無いのです。何処かで落として来たに違いありません。リチャードソン夫人に告げると大事なキーなので探して来るようにと言われました。かなり広範囲に歩いて来たので探すのは大変です。それに芝もかなり深くなっていました。途方にくれました。どこを歩いてきたか考えているとふとあることを思い出しました。途中で犬を引っ張っていたリーシュが外れてトップスが駆け出し慌ててトップスをタックルするため跳びかかった場所があったのです。あそこに違いありません。大体覚えていたその場所に戻り芝の中を見回すと金色に光るキーが見つかりました。ほっとしました。
1 件のコメント:
なんとも浮世離れした生活ですね。
米国の様子は、Mikeが船便で送ってくれたTimeから知る丈でした。
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